板斧(はんふ)  古代・中世の武器シリーズ 第3弾

 

 なにげに好評な古代・中世の武器シリーズ第3弾

 

【板斧(はんふ)】 

斧の二刀流 『水滸伝』の黒旋風・李逵(りき)が巻き起こす殺戮の嵐

 

 

 二刀流というと、日本ではまず宮本武蔵の名が挙がる。今なら、ピッチャーとバッターの両方で活躍する大谷翔平選手を連想する方も多いだろう。中国では、明代(一三六八~一六四四)の口語体の長編小説『水滸伝』に登場する怪力の豪傑・李逵が二刀流である。

 二刀流といっても、李逵が操るのは刀でも剣でもない。李逵が両手に持つのは「板斧」と呼ばれる戦斧である。

 板斧は実在した武器だ。短兵器に分類され、片手で使う。柄は木製で約九〇センチ、刃は長さ約三九センチ、幅は約二九センチで、柔らかい鉄を硬い鋼鉄で包んだものだ。(『武器と防具 中国編』篠田耕一)用途は、長兵器に属する大斧(だいふ)と同じで、割ったり、叩き切ったりする。

 李逵は、この二丁の板斧を武器に戦場を暴れ回り、死体の山を築いていく。両手の板斧が巻き起こす血しぶきが、つむじ風を連想させることから「黒旋風」の仇名がついた。色の黒さから鉄牛(てつぎゅう)とも呼ばれる。

水滸伝』は、ふとしたはずみで盗賊となった宋江(そうこう)を首領とする一〇八人の豪傑が、山東省の梁山泊(りょうざんぱく)に集結して官軍に抵抗し、やがて滅びていく物語だ。『宋史』にも載っている「宋江の反乱」が脚色されて民間に流布していたのを、本来は三六人であった盗賊団を一〇八人とするなど、さらにふくらませた。

 江州(江西省九江)の牢役人だった李逵は、流刑に来た宋江を慕い、最後は宋江とともに毒酒をあおって死ぬ。

 天殺星の宿命を背負い、凶暴ではあるが、心は子どものように純粋な李逵は、数多い登場人物のなかでも抜群の人気を誇る。民衆の間ではアイドル的な存在で、元代の芝居では、李逵を主役としたものが多く演じられた。

 宮本武蔵しかり、大谷翔平選手しかり、李逵しかり、二刀流の使い手は、いつの世も人を惹きつけるものだ。

 

                〈了〉

 

殺伐したお話のあとは、いつものようにカワイイ画像で

 

お馴染みの我らが天使ななみちゃん

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こちらもお馴染みのピー殿

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